債務整理コラム

2025/02/19 債務整理コラム

警備員又は生命保険外交員の方の債務整理

多重債務者が債務を整理する方法には、まず破産があります。破産し、免責を受ければ、債務全部について(非免責債権に該当する債権が存在する場合のその債務を除き)支払いを要しなくなります。その意味では、一般論として、債務整理の方法のうち多重債務者の経済的再生に最大の効果を発揮するのは破産だと言えます。

ですが、破産手続開始決定の効果として、破産者は、法律上、いくつかの資格制限を受けます。とくにしばしば問題となるのが、警備員と生命保険外交員です。警備員及び生命保険募集人(※)は、いずれも「破産手続開始の決定を受けて復権を得ないもの」が従事することを禁じられた職業です(警備業法3条1号、14条1項、保険業法279条1項)。
※ 生命保険会社の使用人で、その生命保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行うものは「生命保険募集人」に該当します。

破産者の資格制限は、破産者の免責決定が確定することによって消滅します。これを復権といいます。
したがって、破産手続の後に免責決定が出て確定に至ることとなる通常のケースであれば、実際に資格制限がある期間は短期間であることになります。

とはいえ、多重債務者の現職が警備員又は生命保険外交員である場合、破産すれば、現在の職を失うことが大きな懸念材料となります。いったん職を失った場合、復権した後に、従前と同様の職を得られるとも限りません。その意味で、破産が必ずしも経済的再生のために最適解ではない可能性があります。

その点、個人再生には、破産のような資格制限がありません。したがって、現に警備員や生命保険外交員をされている方の場合、現職を維持するという観点からは、破産が相当であるような経済状態に陥ったとしても、可能な限り破産を避け、個人再生の可能性を模索することが望ましいといえます。

先年、警備員をされている方について、家計の状態からは余剰の有無が怪しく、その意味では破産が適当と思われるところ、ご本人の希望を踏まえて個人再生の方針で受任したことがありました。受任当初の家計収支表では余剰の額が不足していたため、支出の削減を図るよう指導しましたが、容易に収支は改善せず、その後、ご本人が副業も始められて、受任から9か月以上かかって何とか申立てに漕ぎ着けたという事案がありました。

ご本人は、最悪、破産し、その結果失職することも覚悟されていましたが、最終的に認可決定確定に辿り着くことができ、喜んでいただくことができました。

このようなケースもありますので、債務を整理したいが、現職が警備員又は外交員であるため、破産を躊躇している、また、個人再生をするにも余剰が乏しくて難しそう、とお考えの方も諦めずに一度、弁護士に相談されることをお勧めします。